| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-032  (Poster presentation)

屋久島の植生垂直分布と樹種の生態的性質
Vegetation zonation and ecological traits of trees on Yakushima, Japan

*相場慎一郎(北海道大学), 小野田雄介(京都大学)
*Shin-ichiro AIBA(Hokkaido Univ.), Yusuke ONODA(Kyoto Univ.)

世界的に見ると針葉樹は高緯度・高標高に偏った分布を示す。日本南部に位置する屋久島においても、標高約1000mを境に、低標高の常緑広葉樹林(照葉樹林)が高標高の常緑針広混交林に変化する。このような植生の垂直分布に対応して樹種の生態的性質はどのように変化するのであろうか?標高540−700mの照葉樹林と標高1200mの針広混交林に設置された毎木調査区で得られた30年間の動態データに基づき、構成樹種について生態的性質(最大直径、直径10cmにおける最大成長速度、個体群回転率、萌芽率)を評価し、機能形質データ(個葉・材比重)との関係について検討した。調査区面積は照葉樹林では0.4ha、混交林では1.0haであり、調査下限サイズはいずれも胸高直径2.9cmである。
優占樹種20種は、(1)照葉樹林のみで優占する7種、(2)混交林のみで優占する6種、(3)共通して優占する7種の3つの種群に分類され、それぞれの生態的特性は以下のようであった。(1)最大成長速度と回転率が高い陽樹的常緑広葉樹(ただし、イスノキは回転率が低い陰樹)。(2)仮道管を持つ高木種(針葉樹3種とヤマグルマ)および萌芽率が高い低木性の常緑広葉樹(ハイノキ・アセビ)。(3)最大成長速度が低い陰樹的常緑広葉樹(ヤブツバキ・サザンカ・サカキ・ヒサカキ・シキミ等)。
標高上昇に伴う(1)から(2)の種群への交代は、(1)の種群の低温耐性が低いことにより説明される。また、(3)の種の多くでは混交林において最大成長速度と萌芽率が増加するが、林冠が疎らになり下層の光環境が改善されることから説明される。種の生態的性質と機能形質の関係を見ると、面積あたり葉重は照葉樹林と混交林の両方で個体群回転率と負の相関を示し、混交林では最大成長速度と正の相関を示した。材比重は照葉樹林では最大直径と正の相関を示したが、混交林では負の相関を示した。


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