| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-038 (Poster presentation)
植物の多くが繁殖を動物による送粉に依存しており、これら2者は相利共生の関係にあることが広く知られている。加えて、花蜜に生息する微生物が、植物-送粉者の相利共生関係に影響を与える第3者として注目を集めている。一般的に花蜜微生物の種多様性は低いとされており、特定の分類群が優占する傾向がある。これには花蜜の組成や物理環境によるフィルタリングが影響すると考えられる。本研究ではフィルター機構として二次代謝産物に着目した。植物の多くが植食者への防御物質である二次代謝産物を生産している。これらは花蜜にも分泌されており、花蜜微生物に対する抗菌作用が見られる場合がある。そこで本研究は、二次代謝産物が花蜜酵母の組成や特性に及ぼす効果を明らかにすることを目的とした。
ツツジ科4種(レンゲツツジ、アズマシャクナゲ、ヤマツツジ、トウゴクミツバツツジ)の花蜜を採取し、花蜜中の菌類を単離した。レンゲツツジとアズマシャクナゲは花蜜に二次代謝産物が含まれている。rRNA領域の塩基配列を決定し、99%以上一致する株を同一の分類群(OTU)とした。OTU数あるいは多様度指数が宿主によって異なるか一般化線形モデルで検定した。またOTU組成が宿主によって異なるかPerMANOVAにより検定した。各種で単離した酵母を、レンゲツツジの二次代謝産物の添加条件で培養し、酵母の増殖速度あるいは細胞密度が添加濃度や宿主植物によって異なるか検定した。
花蜜中の菌類の多様性はアズマシャクナゲ次いでレンゲツツジのものが低く、種組成は宿主によって有意に異なった。花蜜に含まれる濃度では二次代謝産物が酵母の増殖を阻害する効果は検出できなかった。一方、増殖能は同種でも宿主によって異なった。