| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-044 (Poster presentation)
GNSSを用いたテレメトリー法は動物生態学や行動学の分野に革新的な変化をもたらし、従来のVHFテレメトリー法より詳細な移動パターンを低労力で追跡することを可能とした。しかし、市販のGNSSテレメトリー機器(GNSS首輪)は一般的に高額で、ユーザーが簡単に電池交換できる機器はないため、多数のGNSS首輪を準備することは現実的に困難である。そこで本研究では、中型食肉目に適用可能な低コストでリサイクル可能なGNSS首輪を開発することを目的とした。開発したGNSS首輪は、GNSS装置、タイマー式の脱落装置であるドロップオフ、追跡用のVHF発信器(サーキットデザイン社)から構成されており、総重量は約270gである。GNSS装置はSONY社Spresenseを使用し、ドロップオフはRafiq et al.(2019)を参照して作成した。バッテリーは単3リチウム電池3本を用いた。稼働時間を実測した結果、5分に1回測位した場合、約88日間稼働しており、市販のGNSS首輪と同等の性能が示され、30分に1回の測位であれば計算上は1年以上運用可能である。また、総費用は約8万(内、VHF発信器5.5万円)であり、再利用費は約1千円(リチウム電池代)であった。日本の電波法の制約により、VHF発信器のコストを下げることが困難であるため、総費用は市販品の半分程度であるが、ランニングコストは非常に低いため、多数頭の追跡やこれまで高頻度で測位した移動パターンの追跡が可能となると考えられる。さらに、タヌキを対象として1週間から1か月程度の実装試験を行った結果、測位成功率は95%以上を示しており、詳細な移動パターンを明らかにすることができたが、筐体の防水性強化、さらなる軽量化、長期間の実装試験が今後の課題として示された。