| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-047 (Poster presentation)
甲虫では体の特定の場所をこすりあわせることで発する摩擦音が、繁殖で広く用いられている。シデムシ科モンシデムシ属 Nicrophorus の甲虫では、親が小型脊椎動物の死体を子供の餌として利用し、捕食者や他の腐食者から子供や資源を防衛する。親は死体に消化液を塗り付けて処理し、その後餌の吐き戻しによって孵化してきた幼虫に給餌することが知られている。その際に外套と腹部の鑢状構造を用いて摩擦音を出し、この摩擦音は親による幼虫のケアに重要な役割を果たしていると考えられている。孵化幼虫が存在しない繁殖初期段階にも頻繁に摩擦音が発せられることから、雌雄間の交信にも用いられている可能性がある。ヨツボシモンシデムシNicrophorus quadripunctatusにおいて餌資源の埋葬中に、雌雄の一方の発音後、短い時間間隔で他個体が発音する鳴き交わしが生じていた。鳴き交わしにおける雌雄の摩擦音の特徴を分析した。また雄が繁殖の初期に餌資源を去ることがあるが、その際の雌の摩擦音の頻度の変化からも、摩擦音が雌雄間の交信である可能性を報告する。