| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-049  (Poster presentation)

高知県浦ノ内湾に生息するアカメの行動生態の解明【A】
Investigation of the Behavioral Ecology of Japanese giant perch by Biotelemetry in Uranouchi Bay,Kochi Prefecture【A】

*三木慎也, 爲國甲登, 山敷祐也, 光永靖(近畿大学)
*Shinya MIKI, Kabuto TAMEKUNI, Yuya YAMASHIKI, Yasushi MITSUNAGA(Kindai Univ.)

アカメ(Lates japonicus)は全長130 cmに成長し、西日本太平洋沿岸、内湾、汽水域に生息する魚類である。高知県浦ノ内湾の湾口域や湾中央域ではマダイ等の海面養殖や筏釣りが盛んである。本湾では、夜行性とされているアカメが日中に養殖生簀や釣り筏で弱った養殖魚や釣獲された魚を捕食する様子が確認されている。このようなアカメは2015年頃から確認され始め、遊漁資源として利用されるようになった。我々は保全と持続的利用の両立に向け、バイオテレメトリー法により浦ノ内湾に生息するアカメの生態の解明を目指した。発信機は、3軸加速度(活動度の指標)、経験水温、経験深度の3つのセンサーのうちいずれか2つを搭載した3種を準備した。2021 – 2023年に浦ノ内湾全域において11個体(全長44 – 124 cm)を採捕し、発信機を装着後、その場で放流した。同時に設置型受信機を湾内の最大15か所に設置し、2024年10月まで行動を記録した。移動記録と経験水温のデータから、放流後のアカメは水温の低下に伴って浦ノ内湾外へ移動し、水温の上昇に伴って回帰したことが分かった。冬季の湾内の水温はアカメの摂餌可能な最低温度を下回るため、低水温からの逃避と考えられた。全11個体のうち5個体の受信は、湾奥に位置する最大規模の流入河川の河口域とそれに隣接する浮桟橋周辺に集中し、活動度は昼より夜が高かった。追跡調査の結果も踏まえると、日中は浮桟橋の直下で休息し、夜間は河口域で活動したと推測された。全11個体のうち6個体の受信は、養殖生簀や釣り筏が設置された場所に集中した。受信率、活動度ともに高かった時間は、養殖魚への給餌時間や釣り筏の営業時間と重複した。これは、養殖魚への残餌や遊漁の撒き餌に集まった天然魚を捕食するためと推測された。このように、浦ノ内湾では養殖や遊漁といった人間活動を巧みに利用する昼行性のアカメと、利用しない夜行性のアカメが共存することが分かった。


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