| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-055 (Poster presentation)
都市化の進行に伴って拡大している夜間の人工灯(ALAN)は、動物の行動に多様な影響を及ぼし、その多くは適応上不利に働く。一方で、ALANによって夜間の明環境と餌昆虫の集中分布が生じ、そのような環境を一部の夜行性捕食者が採餌ニッチとして利用することで、効率的な採餌による利益を享受している。このような捕食者にはALAN周辺での採餌を可能にする特有な行動形質があると考えられるが、その多くは未解明である。この行動形質の1つとして考えられるのは、生得的な人工光への選好性だが、その有無は分類群間で全く異なることが示唆されている。本研究ではニホンアマガエルを用いて、カエル類におけるALAN周辺での採餌を可能とするメカニズムとして、生得的な人工光への選好性が作用しているかを調査した。アマガエルの採集は、光源から十分に離れた地点で行い、ALAN周辺での採餌経験のない個体を実験に用いた。実験用の人工光源としては、野外でアマガエルがよく採餌に利用するLEDライトを用いた。実験アリーナの片側面のみにLEDライトを設置することで内部に照度の勾配を作り、照度の異なる3つの区画を設定した。ライトの点灯前と点灯後で、アマガエルが最も明るい区画に滞在した時間を比較したところ、アマガエルの滞在時間は両処理間で異ならず、本種にはLEDライトに対する生得的な選好性がないことが示唆された。また、LEDライトの点灯後にアマガエルの活動性が有意に低下した。この活動性の低下により、アマガエルのLEDライトへの選好性が検出されなかった可能性がある。活動性の低下は、点灯時の急激な照度の上昇に起因する可能性があり、今後は、この影響を除いた実験が必要である。