| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-059 (Poster presentation)
都市の生物多様性保全のためには、都市に生息する種が環境にどのように適応しているのか理解する必要がある。都市の両生類は、水域で大きく成長することで、陸域の悪影響による成長の制限を弱め、成熟サイズを維持する補填的な成長を行い、都市化に対応している可能性がある。本研究では、東京都内および近郊に生息するニホンヒキガエル(Bufo japonicus)の変態時の体サイズ(=変態サイズ)、成熟時の体サイズ(=成熟サイズ)および成長速度を野外で測定し、都市度の影響が認められるか検証した。さらに、変態サイズの決定に進化的反応が関係するのか検証するため、幼生の飼育実験を実施した。都市度の指標にはNormalized Difference Vegetation Index(NDVI)を用いた。2023年と2024年の2年間、変態サイズの調査を計30地点、成熟サイズの調査を計16地点で行った。成体では、計測時に得た指骨を用いて年齢査定を行った。得られた年齢と体長のデータをゴンペルツの成長曲線に当てはめ、算出される最大絶対成長速度を都市と田舎で比較した。飼育実験では、NDVIの異なる9地点から採取した卵を変態まで同一条件下で飼育し、NDVIが変態サイズと幼生期間に与える影響を検証した。野外調査の結果、NDVIが低いほど(都市度が高いほど)変態サイズは大きく、成熟サイズは小さかった。オスの最大絶対成長速度は田舎より都市で低かった。幼生飼育実験では、NDVIが低いほど幼生期間は長く、変態サイズは大きかったことから、都市では変態サイズが大きくなる進化的な反応が起こっていることが示された。本研究の結果により、都市のヒキガエルは変態サイズが大きいことで、成熟サイズの低下を抑えているが、同等に維持することはできていない可能性が示唆された。