| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-065 (Poster presentation)
イシガイ目二枚貝は幼生期に魚類を宿主として寄生し、稚貝に変態後、魚体から脱落し、底生生活を始める。一方で北アメリカでは野生下、飼育下共に両生類に寄生する種が複数種知られている。本研究では日本国内においてマルドブガイ(Sianodonta calipyos)と野生下で生息域が重複しており、宿主として利用される可能性があるアカハライモリ(Cvops Pvrrhogaster)を用いた室内実験を行った。
岐阜県で採集したマルドブガイと宮崎県で採集したアカハライモリ、ヨシノボリ類(Rhinogobius sp.)を使用し、人為的に寄生させた実験を2024年7月12日から24日の12日間行った。実体顕微鏡で脱落した幼生と稚貝の個体数を計測し、変態率を求めた。また、変態率の間に差があるかどうかについて、脱落した幼生の死骸と稚貝の個体数を用いてFisherの正確確率検定で確認を行った。
実験の結果、ヨシノボリ類については実験終了までに7個体が死亡し、生残数は1個体となった。脱落に関しては、実験期間を通して38個体の幼生と22個体の稚貝が得られ、稚貝変態率は43.1%であった。アカハライモリについては実験終了までに死亡した個体はいなかった。脱落については、34個体の幼生(死亡個体を含む)と36個体の稚貝が得られ、稚貝変態率は51.4%であった。ヨシノボリ類とアカハライモリとの間で変態率に有意差は認められなかった(Fisherの正確確率検定、P=0.1121)。マルドブガイの幼生はアカハライモリとヨシノボリ類を宿主として利用することが示唆された。両種の宿主としての適性は同程度であることが示唆された。今後は他の両生類とイシガイ類との関係や自然下における寄生事例について調査する必要がある。