| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-068  (Poster presentation)

ヒトハリザトウムシの形態変異に対する形態学的研究【A】
Morphological study on the variation of Psathyropus tenuipes L. Koch1878【A】

*安田昂十(東京都市大学大学院), 柴政幸(東京都市大学大学院), 粂川義雅(埼玉県草加市), 福田達哉(東京都市大学大学院)
*Takato YASUDA(Tokyo City  University.), Masayuki SIBA(Tokyo City  University.), Yoshimasa KUMEKAWA(Soka City, Saitama Prefecture), Tatsuya FUKUDA(Tokyo City  University.)

日本列島は南北に長いことから、緯度によって気候も大きく異なる。そのために緯度が動物の生態や形態的な差異に反映されることが知られており、特に移動性が低い動物の場合は、緯度における生態的・形態的な差異が顕著である可能性がある。ザトウムシ類は飛翔能力を持たない土壌動物であるために移動性が低く、いくつかの種においては種内に地理的な変異を持つことが知られている。このうち国内の海岸沿いに広く生息するカワザトウムシ科のヒトハリザトウムシは、これまでに雄の背甲のトゲにおいて、高緯度では痕跡的になる傾向があることや脚と頭胸部も高緯度ほど小さくなることが示されているものの、雌においては不明な点が多かった。このヒトハリザトウムシにおける緯度に沿った形態的変異が、雄特有の現象であるのかといった問題に加え、生態的・形態的な変化が緯度とどのような関係があるのかといった疑問が生じる。そこで本研究では、東北地方・関東地方・中部地方の太平洋沿いおよび広島県広島市から採集したヒトハリザトウムシを用いて外部形態解析を行うことにより、形態変異と緯度の関係を明らかにすることを目的として研究を行った。本研究の解析の結果、背甲のトゲはこれまでの研究と同様に緯度とともに短くなった。これに対し、雌および雄の体幅や雄における体長、陰茎長、鋏角長は高緯度になるとともに大きくなるといった、先行研究とは異なる興味深い傾向を示した。本発表では、その背景について考察を行った。


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