| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-071 (Poster presentation)
イノシシは日本では本州・四国・九州に生息し、環境省の調査では生息域が40年間で約1.9倍に拡大した。分布拡大は本土のみならず、その周辺の島嶼部でも起こっている。全国の410の有人島と、環境省の生息メッシュを重ね合わせてみると、イノシシが生息する島の数は、1978年には29島であったものが、2003年には128島、2011年には193島、2014年には224島、2020年には272島となり、約7割の有人島でイノシシの生息が確認されている。橋などでつながっていない島へは海を泳いで分散したと考えられている。
本土か島嶼かに関わらずイノシシは農業・人身・生態系被害を起こすため、柵による侵入防止と捕獲による加害個体の排除や低密度化が必要である。生息密度が不明なまま捕獲などの対策を行っているため、必要な努力量よりも少ない捕獲圧をかけている場合が多い。また季節による個体数の増減や、成長速度も対策には重要な情報である。そこで、島嶼でのイノシシの生息密度と季節変動、成長速度を明らかにする目的で兵庫県の島嶼域に自動撮影カメラを設置し、複数年にわたり調査を行った。
本研究では個体識別を伴わない自動撮影カメラによる密度推定手法の一つであるREST法を実装した。調査地は、2010年以降にイノシシが侵入したと考えられる兵庫県姫路市の有人島4島(西島・坊勢島・家島・男鹿島)と南あわじ市の沼島である。調査期間は2020年7月から開始し、現在も継続している。個体数推定は約2か月単位で実施した。その結果、1km四方の推定密度は坊勢島の約30個体から家島の約100個体と島により差が見られた。年間を通じて一定の密度ではなく、1-4月が最も密度が低く、その後密度が上昇し9月ごろまでピークを維持した後、減少するという変動を示した。体サイズをカメラの動画より算出したところ、島によっては幼獣の出現時期が複数回確認できる地域もあった。