| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-072 (Poster presentation)
イカナゴのくぎ煮は、兵庫県をはじめとする瀬戸内海沿岸地域では「春の風物詩」として古くから親しまれてきた郷土料理である。しかし近年、イカナゴの漁獲量が急激に減少しており、効果的な資源管理を行うために、イカナゴの個体数の推定が求められている。
除去法 (DeLury法) は、単位努力量あたりの漁獲尾数 (CPUE)が漁獲によって減少することを利用して、個体数を推定する手法である。播磨灘と大阪湾では、漁期の初期にイカナゴ0歳魚のCPUEの減少傾向がみられるものの、漁期の途中から漁具等の変化によってCPUEが上昇することがあり、除去法を単純に適用することはできない。イカナゴ0歳魚はサイズに応じて、コナとナカと呼ばれる銘柄に分かれており、2003年以降の播磨灘で利用可能な、コナのみのCPUEは漁期を通じて減少傾向が明瞭である。
そこで本研究では、機械学習の一種であるランダムフォレスト (RF) を用いて、銘柄別のCPUEを予測することで、除去法の適用可能性を探った。まず、銘柄別の漁獲尾数と努力量が利用可能な、2003年以降の播磨灘のデータを使って、コナ銘柄の漁獲尾数と努力量の割合を予測するためのモデルを作成し、交差検証を行った。その結果、RFによる汎化誤差は、一般化加法モデル (GAM) よりも小さく、RFによりコナ銘柄のCPUEを正確に予測できることが分かった。
次に、作成したモデルを用いて、2002年以前の播磨灘および全期間(1989~2024年)の大阪湾におけるコナ銘柄のCPUEを予測し、除去法を適用した。その結果、推定された個体数の傾向はRFとGAMで似通っていたが、GAMの方が個体数を大きく推定することがあり、概してRFの方が、GAMよりも分散が小さかった。また、すべての年・漁協をまとめて解析することで、漁期が短くサンプルの少ない近年においても個体数推定を行うことが可能になった。今回の手法を用いて、科学的かつ客観的な方法でイカナゴ資源の個体数をモニタリングし、適切な資源管理が行われることが望まれる。