| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-076 (Poster presentation)
放牧地で飼育していたヤギに野生のホンドタヌキが近づき、ヤギはタヌキを追い払おうとするが、ヤギが退去して別の場所で休息する様子を観察したことから、哺乳類の局所的な群集が行動の干渉で形成される可能性を思いついた。局所群集として、10秒から数時間程度の短い時間スケールで、1mから10m程度の小さな空間スケールのassemblageを想定する。行動圏(1日のエネルギー収支や休憩)や、1年の季節移動範囲(1年のエネルギー収支や、繁殖・被食・捕食による低頻度の個体数変化)より小さなスケールだが、最も基本的な群集である。局所群集は(A)環境に応じた各種の独立した分布の重なり、(B)一方の種が作り出す環境が他種に影響する相互作用、(C)個体間の行動の干渉、の3つのメカニズムで形成されると考えた。 (1)都市の緑地である横浜国立大学内ヤギ放牧地(飼育ヤギ、ヒト、野生タヌキ、野生アライグマ)、里地と森林の境界である (2)秦野市三廻部および(3)横野(ニホンイノシシ、ニホンジカ、ニホンアナグマなど)に自動撮影カメラを設置した。1、6、36分の各時間区切りの時系列データを作成し、カメラ前への入域とカメラ前からの出域に与える他個体の影響を解析した。その結果、群れを作る種では同種他個体の正の干渉が検出され、特定種の個体数が多い局所群集のメカニズムを確認できた。ヤギとヒトの間でも同様の干渉が検出された。またタヌキからヤギへの一方的な付きまとい(ヤギがいるとタヌキが入域、ヤギがいるとタヌキが出域しないが、逆はない)が検出された。タヌキとアライグマの間にも干渉が存在した。調査地(2)ではシカの存在でイノシシの出域が促進されていた。メカニズム(B)に関して体重が重いシカやイノシシが形成した獣道の入域確率(地点の利用確率)がアナグマで高かった。このように行動干渉から局所群集を研究する道筋が明らかになった。