| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-077 (Poster presentation)
被食者は、捕食リスクに対し形態や行動を変化させる対捕食者反応を示す場合がある。対捕食者反応は、捕食者1種のみが存在する場合と捕食者2種が同時に存在する場合で異なることがある。これは、被食者が、捕食者1種のリスクと2種のリスクを区別していることを示唆する。一方、同じ被食者を消費する捕食者2種が存在する場合、捕食者種間で捕食(ギルド内捕食)が起こることがある。このとき、捕食者種が減少することで、被食者の捕食リスクが減少する可能性がある。このため、ギルド内捕食が生じた場合、被食者の反応は減少するかもしれない。しかし、ギルド内捕食に対する被食者の反応は、ほとんど研究されていない。本研究では、捕食者にミヤコカブリダニ(以下、ミヤコ)とチリカブリダニ(以下、チリ)、それらの被食者にナミハダニ(以下、ハダニ)を用いた。ミヤコ雌成虫はチリ幼虫を捕食する。また、ハダニはミヤコ雌成虫に曝露されその痕跡が残ったと考えられる葉片を避けて産卵する。ハダニのチリ幼虫とミヤコ雌成虫それぞれの痕跡に対する反応が、ミヤコによるチリの捕食が生じた場合に変化するか検証した。ミヤコ雌成虫によるハダニ卵の捕食数はチリ幼虫の存在により減少し、ギルド内捕食が起きたときにハダニ卵の捕食リスクが減少することが示唆された。ハダニはチリ幼虫に曝露された葉片への産卵を避けなかったが、ミヤコ雌成虫に曝露された葉片、ミヤコとチリに曝露された葉片への産卵を避けた。しかし、ミヤコを曝露した葉片とミヤコとチリをともに曝露した葉片に対するハダニの産卵忌避に違いはなかった。ギルド内捕食によってハダニ卵の捕食されるリスクが減少しても、ミヤコ雌成虫の存在による捕食リスクは依然として高く、ハダニはギルド内捕食による卵捕食のリスクの減少に反応しなかったのかもしれない。