| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-078  (Poster presentation)

淀川における魚類の30年前と現在の食性比較の試み
An attempt to compare the feeding habits of fish in the Yodo River 30 years ago and today

*河内香織(近畿大学), 山本義彦(大阪環農水研・多様性), 長田爽良(近畿大学)
*Kaori KOCHI(Kindai Univ.), Yoshihiko YAMAMOTO(RIEAFO, Biodiv), Sora NAGATA(Kindai Univ.)

 生物は生息場所の環境の変化により様々な影響を受ける。例えばコウノトリの研究では、窒素安定同位体比の低下は水田の圃場整備により淡水魚が遡上することが困難になり、低次の餌資源を摂食した結果だと報告されている。滋賀、京都、大阪を流れ大阪湾に流出する淀川では過去に、外来種の急増、水質汚濁、河川改修による河道の水路化、ワンドやタマリの消失など様々な環境変化が生じている。そのため、淀川に生息する在来魚は過去と現在の食性が異なる可能性がある。本研究では、1990年代と2020年代における在来魚の窒素安定同位体比(δ15N)を測定し、両年代の値を比較した。また、消化管内容物の分析により、在来魚が利用する餌生物の種類を記録することを試みた。これらのデータを組み合わせることで、30年前と現在の食性について考察した。各年代に淀川で採取された雑食もしくは魚食の在来魚(オイカワ、カマツカ、コウライモロコ、コウライニゴイ、ハス)の標本を使用した。コウライニゴイとハスに関しては2020年代におけるサンプルが少なく解析に用いることが出来なかった。各サンプルの全長、尾叉長、体長を計測したのち消化管の内容物を観察し、餌生物の種類、個体数、大きさを記録した。各サンプルの筋肉組織を採取してδ15Nを測定し、各魚種、採捕地点、年代ごとに比較し、食性を評価した。
 カマツカ、コウライモロコ、オイカワの3 種で1990年代よりも2020年代の方がδ15Nの値が有意に低かった。消化管の内容物調査において1個体あたりの出現植物片は1990年代(n = 76, M = 2.04, SD = 3.22)と比較して、2020年代(n = 41, M = 0.88, SD = 1.54)で有意に少なかった。昆虫類やユスリカの出現数は有意な差が認められなかった。δ15Nの低下は栄養段階の低下を示しており、2000年以降に増加した外来魚との食物資源を巡る競争が在来種に影響を与えている可能性がある。


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