| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-080  (Poster presentation)

都市公園におけるセミ類の分布を規定する環境要因と種間相互作用
Environmental factors and interspecific interactions determining the distribution of cicadas in urban parks

*浅野涼太(白梅学園短期大学, 東京農工大学), 立石幸輝(新潟大学)
*Ryota ASANO(Shiraume Gakuen College, Tokyo Univ. of Agri. and Tech.), Koki TATEISHI(Sch. Sci. Niigata Univ.)

 セミの群集は都市化の進行に伴い大きな変化を経験してきた。また、都市部ではクマゼミの侵入が新たに確認された地域もある。クマゼミの侵入はその地域に暮らすセミ相の生息状況に影響を及ぼす可能性が指摘されているが、その影響の実態は十分に解明されていない。そこで、クマゼミの侵入が新たに確認された地域の都市公園においてセミの抜け殻調査を実施し、各セミ種の個体数を把握し、統計モデルを構築することで、クマゼミの侵入がその他の種組成に与える影響を評価した。
 調査は、東京都小平市内の公園(181カ所)で2023年8月から9月下旬までの期間に実施した。各公園で2回の調査を行い、5670個のセミの抜け殻を集めた。次に、GISソフトを用いて、公園の周囲25、100、400m円形バッファー内の環境特性として、各土地利用(JAXA土地利用土地被覆図)の面積を抽出した。土地利用面積変数のうち、セミの個体数と関係が弱いもの(単回帰モデルの係数 p≧0.01)を除外し、残りの40変数を主成分分析により5主成分に集約した。出現した全6種のうち個体数の多かったアブラ、ミンミン、ニイニイ、ツクツクボウシ、クマゼミを対象に、総当たりの種間相互作用を定量化した。モデルには、種ごとの個体数が環境変数(サイト共変量)と種間相互作用(ランダム効果)によってばらつくことを仮定したTobler et al. (2019) の潜在変数モデルを採用した。
 結果、クマゼミは他種と負の相関を示す傾向が強く、特にニイニイゼミ(-0.642)やツクツクボウシ(-0.579)との間で強い負の関係が見られた。 これは、クマゼミがこれらの種と異なる環境を好む可能性、または競争による排除が生じている可能性を示唆する。一方、アブラゼミとは比較的正の相関(0.44)を示しており、一部の環境条件では共存が可能であることが示された。また、ミンミンゼミ、ニイニイゼミ、ツクツクボウシの間には強い正の相関(0.877~0.943)がみられ、これらの種は同じ空間で共存しやすい可能性が示唆された。


日本生態学会