| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-084 (Poster presentation)
奄美大島は急峻な地形を有しており、世界的にも数少ない中緯度地域の亜熱帯湿潤林が成
立している。しかし、奄美大島の森林には、多くの固有種が生息しているにもかかわらず
、森林の大部分は伐採により、異なる林齢のパッチからなる二次林となっている。したが
って、二次遷移に伴う生物群集の動態について知ることは、奄美大島における森林生態系
の保全・計画を推進するうえで重要である。一般的に、森林の垂直的な階層構造間で生物
群集は異なることが知られており、林齢や階層構造、地形によって生物群集の反応が異な
ることが予想される。そこで本研究では、種多様性が高く多様な生態系機能を持ち、森林
環境の評価に適している甲虫群集を対象として、各環境要因に対する群集の反応の違いを
検証した。2024年の6月下旬から7月上旬にかけて、衝突板トラップを用いて甲虫を採集し
た。林齢が31年から147年までのモニタリングサイト計26地点の林冠(約9m)および下
層(約1m)にトラップを1週間設置し、サンプルを回収後、種レベルで同定した。解析で
は、地形(尾根・谷)や階層構造(林冠・下層)、林齢に対する甲虫群集の構成や多様性
を評価した。調査の結果、甲虫は合計で132種693個体が採集された。甲虫群集は林齢より
地形や階層構造に強く反応することが示された。このことは、二次遷移に伴う生物群集の
動態を明らかにするうえで、地形と森林階層を考慮する必要があることを示唆している。