| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-085 (Poster presentation)
トビムシ群集は土壌有機物層の影響を受けるとされるが、有機物層構造を定量化してトビムシ群集構造を解析した研究は不足している。土壌有機物層の構造は、落葉の化学形質や、葉の丸まりや厚さ等の物理形質が影響しており、異なる樹種が優占する林分間では土壌有機物層の構造が変化すると考えられる。そこで本研究では、葉形質の異なる樹種が優占する植生下で有機物層構造の構造を定量化し、その構造とトビムシ群集構造との関係を明らかにすることを目的とした。
京都大学上賀茂試験地内の、葉形質が異なる樹種(アラカシ、コナラ、ソヨゴ、ツバキ、ネジキ、ヒノキ)が優占する6サイトを選択し、各サイトから6個ずつ計36個のトビムシおよび有機物層構造の各々のサンプルを近傍で採取した。有機物層構造は、土壌切片法によって得られた有機物層の垂直断面切片から有機物層構造を示す示数(厚さ、微小空隙量)を求めることで定量化した。なお微小空隙量は25~250㎛2の空隙の合計面積を示す。また植物リター形質を示す示数として各樹種の葉の厚さ、未乾燥葉面積、リグニン濃度を計測した。
一般化線形モデルを用いて解析した結果、トビムシ群集の個体数密度、種数、体長の加重平均は微小空隙量との関係が認められ、微小空隙量が多くなるほどいずれも減少する傾向があった。体長は有機物層の厚さとも関連があり、有機物層が厚くなると小さくなる傾向があった。これは、本調査地において小さな空隙が大型の表層性種の制限要因となったことを示唆している。また、いずれの有機物層構造の示数も落葉の厚さに影響を受けており、微小空隙量は未乾燥葉面積とリグニン濃度にも影響されていた。これらの結果は、落葉の化学形質だけでなく物理形質も有機物層構造に影響を与えていることを示唆しており、こうした樹種間の形質の違いがもたらす有機物構造がトビムシ群集構造を決定する要因の一つであると考えられた。