| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-086  (Poster presentation)

沖縄島のアリ群集における優占2種の個体レベルの採餌行動の比較【A】
Comparison of individual-level foraging behavior between two co-dominant ants on Okinawajima Island【A】

*有馬一輝, 鶴井香織, 辻和希(琉球大学)
*Kazuki ARIMA, Kaori TSURUI, Kazuki TSUJI(University of the Ryukyus)

多種共存のメカニズムは生態学の重要問題である。アリ群集はニッチの似通った多種が共存する「プランクトンの逆説」的様相を示すため,その研究材料としてよく用いられてきた。我々は沖縄島の末吉公園で共存するバイオマス上最優勢とされるアリ2種の採餌行動の違いに注目した。
トゲオオハリアリ (Diacamma cf. indicum from Japan)は単女王単巣性の沖縄島在来種である。他方のアシナガキアリ (Anoplolepis gracilipes)は多女王多巣性の外来種である。2024年2月から2025年1月まで,那覇市の末市公園で地表活動中のワーカーに餌(節足動物の死骸)を与えるか,自然に餌を運んでいるワーカーを発見し,追跡した。餌の運搬距離と運搬時間,一つの餌の採餌に参加したワーカー数,餌の種類を記録し,ニッチ分割やトレードオフを示唆する種間の差の存在を検討した。
アシナガキアリのワーカーは166件のデータのうち145件(9割弱)が巣から5m以内の範囲で採餌をしていた。それに対して,トゲオオハリアリのワーカーの巣から5m以内で採餌する割合は127件中74件(6割弱)であり,トゲオオハリアリの方が1巣の採餌範囲が比較的広い可能性が示唆された。また,トゲオオハリアリは全て単独で採餌していたことに対し,アシナガアリでは稀にだがグループによる採餌が見られた。餌の種類は,両種ともに多様な節足動物の死骸や植物の種子を運んでいたが,アシナガキアリでのみ同種ワーカーの死骸を運ぶ様子も頻繁に観察された。しかし予想外の奇妙な現象を発見した。運搬中の餌を途中で捨てるか,あるいは見失うという行動がほぼアシナガキアリにだけで比較的頻繁に見られたのである。この違いの要因を今後検討する予定である。


日本生態学会