| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-088  (Poster presentation)

茶園における農法の違いが種子食昆虫による雑草種子捕食サービスに及ぼす影響
Effects of farming methods on the ecosystem service of weed seed predation by insect seed predators in tea fields

*市原実(静岡大学), 村上源太(静岡農技研・茶研セ), 大倉修士(静岡大学), Niken Nabilaputri PRANAASRI(Shizuoka Univ.), 山下雅幸(静岡大学), 澤田均(静岡大学), 内山道春(静岡農技研・茶研セ)
*Minoru ICHIHARA(Shizuoka Univ.), Genta MURAKAMI(Shizuoka Pref. Res. Inst.), Shuji OKURA(Shizuoka Univ.), Niken Nabilaputri PRANAASRI(Shizuoka Univ.), Masayuki YAMASHITA(Shizuoka Univ.), Hitoshi SAWADA(Shizuoka Univ.), Michiharu UCHIYAMA(Shizuoka Pref. Res. Inst.)

 農地の生態系サービスの一つに,種子食動物による雑草種子の捕食がある。散布後種子捕食は,雑草シードバンクの主要な減少要因の一つであり,雑草の個体群動態に影響しうる。近年,国内の茶産地では有機栽培茶の生産が推進されており,有機栽培茶園が増加しつつある。このような農法の変化は種子捕食に影響しうるが,茶園の農法の違いによる種子捕食への影響を評価した研究は皆無である。そこで本研究では,有機栽培茶園と慣行栽培茶園にて,種子食昆虫類(コオロギ類とゴミムシ類)の活動密度と雑草種子捕食率を調査した。
 静岡県牧之原市と島田市内の有機茶園と慣行茶園(計4圃場)にて,2020年と2021年の6~10月に調査した。種子食昆虫密度と種子捕食率は,それぞれ粘着トラップ法と種子カード(種子を糊付けした布やすり)法により定量した。2020年はネズミムギ,2021年はネズミムギ,メヒシバ,オヒシバ,ダンドボロギク,コセンダングサの種子捕食率を調査した。
 種子を捕食した昆虫は,主にコオロギ類とゴミムシ類であった。有機茶園では慣行茶園と比べ,コオロギ類の活動密度が高かった。種子食ゴミムシ類の捕獲数は,2週間あたり1個体未満と少なかった。2020年の有機茶園での2週間あたりのネズミムギ種子捕食率の平均値は51.8%(牧之原市)と56.0%(島田市),慣行茶園では43.5%(牧之原市)と35.5%(島田市)であり,有機茶園でやや高かった。2021年の有機茶園での2週間あたりの各草種の種子捕食率の平均値は46.1~80.5%(牧之原市)と42.8~60.3%(島田市),慣行茶園では49.1~59.6%(牧之原市)と21.7~46.1%(島田市)であり,有機茶園でやや高かった。以上から,茶園ではコオロギ類とゴミムシ類が雑草種子低減に貢献しており,その貢献度は慣行茶園よりも有機茶園のほうがやや高いと考えられた。


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