| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-091  (Poster presentation)

日本のセイタカアワダチソウとその植食性昆虫に関する最近の話題
Recent topics about Solidago altissima and its herbivorous insects in Japan

*池本美都(弘前大学, 国立環境研究所), 橋本洸哉(弘前大学, 国立環境研究所), 片山昇(小樽商科大学), 中村祥子(森林総合研究所), 佐々木大介(北海道立総合研究機構)
*Mito IKEMOTO(Hirosaki Univ., NIES), Koya HASHIMOTO(Hirosaki Univ., NIES), Noboru KATAYAMA(Otaru Univ. of Commerce), Shoko NAKAMURA(FFPRI), Daisuke SASAKI(HRO)

新たな地域へ移入した植物は、原産地での植食者から解放された結果、著しく繁栄することがある。明治時代に北米から日本に渡ったセイタカアワダチソウもそのような種であることが指摘されており、二次植生地での優占種として、秋には有力な蜜源植物となっている。しかし、この植物に対する植食者の食害圧は、過去 30 年間で大きく変化した。原産地の北米から、1990年頃にセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシが、2000年にはアワダチソウグンバイが移入し、現在も日本列島で分布を拡大しているためである。このように、短期間で劇的に群集構造が変わりつつあるセイタカアワダチソウの植食者と、その植物体への影響について、最新の2件の研究をオムニバス的に報告する。
一件は、北米から日本に侵入が近年初確認されたアワダチソウミドリヒゲナガアブラムシUroleucon luteolum Williamsの記録である。本種は原産地では主にSolidago属を餌としており、他の大陸や島嶼への拡散の報告はない。我々は2022年から2024年にかけて茨城県でセイタカアワダチソウ上に本種のコロニーを発見し、採集個体を形態学的キーとDNAバーコーディングを併用して同定を行った。
もう一件は、アワダチソウグンバイの葉への食害が花蜜特性に及ぼす影響についてである。本種による食害により、筒状花当たりの花蜜量は減少したが、糖量には影響がなかった。しかし、円錐花序あたりの糖量は大幅に減少した。これは食害によって円錐花序あたりの筒状花の生産数が減少したためである。植物の遺伝子型も花蜜の形質の一部に影響を及ぼし、食害の効果との交互作用が検出された。
アワダチソウグンバイの分布は現在も拡大し続けているため、セイタカアワダチソウが提供する蜜源は全国的に減少している可能性がある。アワダチソウミドリヒゲナガアブラムシもまた今後分布を広げていくのか、グンバイとの関係や植物への影響もあわせて、経過を観察していきたい。


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