| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-093  (Poster presentation)

島嶼における高いマダニ類の多様性と季節・年変化、及び鳥類との潜在的関係
High tick diversity and the seasonal/annual changes in a remote island, and the potential relationship with avian fauna

*小峰浩隆(山形大学), 土井寛大(森林総合研究所), 岡部貴美子(森林総合研究所)
*Hirotaka KOMINE(Yamagata University), Kandai DOI(FFPRI), Kimiko OKABE(FFPRI)

現在、世界各地でマダニやマダニ媒介感染症の分布拡大が懸念されている。日本においても、SFTSや日本紅斑熱の媒介種と考えられるマダニ類が、既知の分布域の北方で確認されつつある。しかし、東北地方のマダニ類に関する情報は少なく、その実態は未解明な点が多い。そこで本研究では、東北地方のマダニ類の生息状況及びその生態学的な背景の一端を明らかにするために、山形県の離島、飛島においてマダニ相及び宿主動物相の調査を行った。島内7か所に調査ラインを設定し、旗ずり法を用いて植生上のマダニを採集した。調査は月に1回、2021年6月-11月、2022年3-11月、2023年3-10月、2024年3-10月の期間に実施した。また、自動撮影カメラを島内に設置し、宿主動物相を調査した。その結果、Amblyomma testudinariumDermacentor bellulusHaemaphysalis hystricisH. formosensisH. cornigeraH. flavaH. japonicaH. megaspinosaH. longicornisIxodes turdusI. nipponensisI. tanukiI. monospinosusI. persulcatusI. pavlovskyiの計15種類のマダニ類を確認した。個体数割合としては、広域分布種及び南方系種が多数を占めたものの、北方系種も少数含まれていた。今回確認された南方系種及び北方系種は共に同緯度帯の本土ではほとんど確認されない種であり、同一地域で確認されたマダニ群集としては日本の他地域と比較して多様であると考えられる。また、各種及び成長段階によって、個体数に季節・年変化が認められた。マダニ類はその生存や繁殖、分散を宿主動物に依存していると考えられるが、当該離島の哺乳類相は非常に貧弱であり、ジネズミやネコが生息しているのみである。一方で、当該離島では多様な鳥類が確認されており、多くの渡り鳥が飛来する事から、鳥類によって多様なマダニ類が島に供給されている可能性が考えられる。本発表では、宿主動物相の調査結果と合わせて議論する。


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