| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-095  (Poster presentation)

日本産オカメミジンコ属の多様性と分布:DNAバーコーディングの結果から
DNA barcoding of the genus Simocephalus (Crustacea: Cladocera) in Japan

*牧野渡(東北大学), 鈴木碩通(東北大学), 大竹裕里恵(京都大学), 占部城太郎(東北大学), 辻彰洋(国立科学博物館)
*Wataru MAKINO(Tohoku Univ.), Hiromichi SUZUKI(Tohoku Univ.), Yurie OTAKE(Kyoto Univ.), Jotaro URABE(Tohoku Univ.), Akihiro TUJI(NMNS)

淡水産枝角類(Crustacea: Cladocera)の分類は世界的に再整理されつつある。ただし、その進行状況は分類群間で大きく異なり、沿岸性の枝角類ではあまり進んでいない。本研究では、沿岸性枝角類としては大型の分類群であるSimocephalus属(オカメミジンコ属)について、2003年以降に採集された日本産種の分類を、形態とDNAバーコーディングの双方から再検討した上で、種ごとの地理分布を整理した。分子系統樹で大別された5つのクレードを、個体の形態とクロスチェックした結果、S. vetulusS. serrulatusS. heilongjiangensisS. cf. lusaticusS. cf. expinosusの5種が確認できた(ただしこれらの名称は、今後の研究で変更される可能性がある)。高頻度で出現したのは最初の2種で、いずれも湖沼だけでなく水田からも出現した。なお、S. serrulatusは2つの分子系統に大別され、その一方は中部地方から北海道にかけての、山地の池塘など湿原に出現し、恐山の宇曽利山湖にも分布していた。もう一方の分子系統は九州から本州北部にかけての、主に標高の低い池や水田に出現した。宇曽利山湖のpHは3.5程度と低いことと、泥炭湿原の池塘のpHは一般的な湖沼の値よりも低いことを考慮すると、2つの分子系統は分布だけでなく生態的特徴も異なると予想された。


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