| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-096 (Poster presentation)
世界規模で生物多様性が減少するなか、生物多様性を評価しモニタリングする必要性がますます高まっている。環境DNAメタバーコーディングは、生物が環境中に放出したDNAを分析することで生物多様性を評価する調査法である。専門家の関与が必須であった従来の調査方法と比べて、環境DNAメタバーコーディングは簡便で生物同定の専門知識を不要とするため、生物多様性の評価手法として注目を集めている。近年では、空気試料からDNAを捕集することで陸上生態系の多様性を評価する手法としての改善が進んでおり、先行研究ではクモ類の網を天然の環境DNAサンプラーとして利用することで、鳥類と哺乳類の検出に成功している。本研究では、長野県上田市にある椀子ヴィンヤード(キリンHDメルシャン株式会社のブドウ園)を調査地として、クモ類の網を用いて多様な陸上生態系の生物群である真菌類と昆虫類の多様性評価を試みた。ヴィンヤードは草地環境を呈し、春から初夏にかけてクサグモ類(殆どがイナズマクサグモ)の網が多数みられる。そこで5〜6月にクサグモ類の網を採集し、環境DNA分析を試みた。現時点では、残念ながら昆虫類に関してはライブラリ作成段階で良好なPCR増幅が見られなかったが、真菌類では多数のサンプルからデータを得ることができた。発表では、昆虫類で良好な増幅が見られなかった原因、蜘蛛の網を材料とした真菌類の多様性評価手法、および植物病原菌などの発生予察への利用可能性について考察する。