| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-097 (Poster presentation)
Oxford Nanopore technologiesが開発したナノポアシーケンサーは第3世代のシーケンス技術として注目されており、医学や細菌の新規ゲノム配列決定の分野などで特によく使われている。開発直後はシーケンスのエラー率が高く、シーケンス後の解析のハードルも高かったが、こうした環境も年々改善されている。
ナノポアシーケンサーはサンプルあたりのライブラリ調整費用がかなり安く抑えられる利点があるため、多検体を扱う生態学と相性が良い。また、機器自体がそれほど高額でないため、一つのラボに一つ以上のナノポアシーケンサーを設置することも無理なく可能である。シーケンス後はすぐに解析に取り組めるため、実験結果のフィードバックサイクルが早い。また、ゲノム解析にとどまらず、あらゆる長さの配列をシーケンス可能であり、バーコーディング解析などにも利用可能である。
本研究では、生態学で有用な一連の実験を計画・実行し、コストパフォーマンスの評価と実験プロトコルの整備を行った。ナノポアシーケンサーを用いた系統解析と環境DNA解析を実行した。系統解析ではPCRの際に5つのプライマーを同時に使用し、一度のシーケンスでサンプルあたり3000 bp以上の配列を獲得した。この解析の一領域あたりのランニングコストはサンガーシーケンスの10分の1程度であった。発表の際には、サンガーシーケンスで得られた配列と比較し、結果の妥当性を評価する予定である。環境DNA解析では井戸水および河川から抽出したDNAサンプルを用いて、貝類・昆虫類・魚類由来のDNAの検出に成功した。環境DNA解析もイルミナ製シーケンサーを用いた解析より低いコストで実行できた。