| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-098 (Poster presentation)
現在、生物多様性の喪失が世界各地で問題になっている。都市開発はその主な原因の1つであり、鳥類の生息状況にも影響を及ぼしている事が懸念されている。特に水域の減少や劣化の進行が危惧されており、水鳥に関する情報の蓄積が必要である。日本は渡り性水鳥の重要な中継地であるため、各地での生息状況の把握が求められている。また、都市化は野生生物の行動形質にも影響を与える可能性が考えられる。しかし、都市化による水鳥の行動形質への影響の実態はわかっていないことが多い。
そこで本研究では、都市化による鳥類の多様性と行動形質への影響を理解するために、水鳥各種の個体数、種数、FIDを記録し、都市と郊外で比較を行った。山形県鶴岡市を都市と郊外にわけ、それぞれ7箇所、合計14箇所の水域を調査地として調査を実施した。期間は2023年12月から2024年3月までとした。統計解析は、一般化線形モデルを用いた。
その結果、都市で12種、4815羽、郊外で9種、178羽、累計4993羽の水鳥を確認した。個体数の多かった4種の水鳥を対象に統計解析を行うと、マガモは都市の流水域で有意に多かった(P<0.001)。コガモ、カルガモは都市では止水域で有意に多く(P<0.001)、郊外では流水域で有意に多かった(P<0.001)。ヒドリガモは都市では流水域で有意に多かった(P<0.001)。FIDについては、水鳥全体で比較を行うと都市で有意に短かった(P<0.001)。また、ヒドリガモと比較して、マガモ、カルガモ、コガモは都市で有意に短かった(P<0.001)。水面採食性のカモで比較を行っても都市で有意に短かった(P<0.001)。
本研究から、都市の水域は複数の鳥類にとって心理的な安全性を伴った生息地として機能している可能性が示唆された。今後は、餌資源や、環境条件ついてより詳細に検証する必要がある。