| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-101 (Poster presentation)
サクラ、モモ、ウメ等バラ科樹木に寄生し枯死させる特定外来生物クビアカツヤカミキリによる被害が日本各地に広がっている。分布拡大を防止するためには、幼虫が寄生木から排出するフラスの早期発見が重要であり、フラス形状の観察による種の同定・判別が熟練者でなければ困難であるため、我々はフラスに付着したDNA分析による同定を実施している。しかし、従来のDNA分析法は、設備の整った実験室での実施が前提となっており、利便性・簡便性に課題が残る。そこで我々は高校生物部と連携し、高校生が部活動等を通じてクビアカツヤカミキリのDNA検出を行えるよう、抽出工程を簡素化したDNA抽出キット及び安価に入手できるモバイルPCR装置を用いた、DNA検出プロトコルを開発したので、ここに報告する。従来法によるフラスから当該種DNAのPCR分析には、①高額のリアルタイムPCR装置機(数百万円レベル)等、②多数の試薬(9種)・消耗品(4種)③複雑な手順(遠心だけで7工程)が必要になる。今回新たに開発したプロトコルでは、①低廉なモバイルPCR装置(90万円まで)や、インキュベーターの代用として電気ポットを使用、②少ない試薬(抽出キットを合わせ3種)、消耗品(2種)、③単純な手順(DNA抽出には遠心不要)で分析できるよう工夫した。また、DNA抽出から判定に要する時間は、従来法の約4時間に対して、簡易法では1~2時間で完結し、分析時間も半減させることができた。クビアカツヤカミキリのように広く県民が監視できる体制を確立することが必要な外来生物の防除に向けて、このように簡易で安価な手法を、高校生を含め、広く普及させていくことが重要であると考える。