| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-105 (Poster presentation)
河口付近まで山間を流れる小規模河川では、陸域から落葉リターが豊富に供給されるため、下流部の林冠が開いた場所でも水生昆虫にリターが利用されている可能性がある。落葉広葉樹林帯を流れる河川では、リター供給が落葉期に集中し、河川内の堆積リターの組成は季節で大きく異なる。さらに、落葉時期は標高や樹種によって異なり、供給されるリターの種類も変化すると考えられる。破砕食者は食物源とするリターのタイプに選好性を示す場合があり、供給されるリターの季節変動が破砕食者の出現と関係している可能性がある。そこで本研究では、季節によって異なるリターが、流程に沿って変化する水生昆虫にとって果たす役割を明らかにすることを目的とした。新潟県佐渡島外海府海岸の小規模河川・大倉川において、2023年8月から2024年6月にかけて、堆積リターの組成を明らかにするためのメタゲノム解析を実施し、リターに付着する水生昆虫との関係およびその季節変動を検証した。その結果、上流と中流では、落葉期にクルミ科やミズキ属、オノエヤナギなどの落葉広葉樹、それ以外の季節ではクズなどの草本やスギの検出割合が高くなった。下流では、8月から12月に草本の割合が高くなり、それ以外の時期はハンノキなどの落葉広葉樹の割合が高くなった。水生昆虫について、上流と中流では、落葉期は端脚目やカクツツトビケラ科などの破砕食者が優占し、落葉期以外はマダラカゲロウ科やオナシカワゲラ科、ミドリカワゲラ科などが優占した。下流では、端脚目は出現せず、8月と9月にカクツツトビケラ科が優占したが、それ以外の時期はカワゲラ科やブヨ科、マダラカゲロウ科などの破砕食者以外が優占した。これらの結果から、流下物の季節的な変化や、流程に沿った水生昆虫相の変化に伴って、堆積リターの水生昆虫にとって果たす役割がシフトしている可能性が示唆された。