| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-107 (Poster presentation)
森林が持つ二酸化炭素吸収能や蒸発散作用による気候緩和機能解明にむけて、世界各地の森林樹冠上において、渦相関法による二酸化炭素フラックス観測が行われ、フラックス長期観測データが蓄積されて来ている。しかしながら、多くサイトで用いられているオープンパス型のガス分析計では、降雨中やその後の測定部が濡れている間のデータについては欠測としているため、成長期に降雨の多いアジアモンスーン地域では、二酸化炭素吸収能や蒸発散作用の推定に大きな誤りを含んでいる可能性がある。そこで本研究では、未解明となっている降雨中の植物のガス交換特性について明らかにすることを目的とし、暖温帯落葉広葉樹林(京都府木津川市)の降雨前後を含めた森林樹冠上CO2フラックスの解析を行った。降雨によるフラックス測定の誤差をできるかぎり少なくするため、短スパンクローズドパス分析計(CPEC310, Campbell)を用いて樹冠上H2O/CO2フラックス測定を行った。日中の降雨中および降雨直後の二酸化炭素交換量は、それ以外の時に比べておおむね大きな吸収量を示していた。一方、夜間においては、降雨中および降雨直後の二酸化炭素交換量は、それ以外の時に比べて大きな放出量を示していた。夜間のフラックスは生態系呼吸量を示しており、降雨直後において大きくなるものの、日中にはそれを上回る量の光合成が行われており、結果として降雨直後の日中では、大きな吸収量が観測されていることが示唆された。