| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-108  (Poster presentation)

亜熱帯マングローブ林における根滲出物の定量的評価【A】
Quantitative evaluation of root exudates in subtropical mangrove forests【A】

*加藤徳浩(滋賀県立大学), 大塚俊之(岐阜大学), 尾坂兼一(滋賀県立大学), 飯村康夫(滋賀県立大学)
*Norihiro KATO(Shiga Prefectural Univ.), Toshiyuki OHTSUKA(Gifu Univ.), Ken'ichi OSAKA(Shiga Prefectural Univ.), Yasuo IIMURA(Shiga Prefectural Univ.)

 マングローブ生態系が持つ高い炭素隔離機能は、深さ数mにまで及ぶ膨大な細根生産量と速いターンオーバーが起因しており、地下部での細根動態とそれらの生態系における炭素フラックスへの寄与が定量的に評価されている。しかし、現在もなおフィールドレベルで明らかにされていない炭素フラックスが「根滲出物」である。根滲出物は細根から連続的に供給され、既存の土壌有機物分解の分解速度にも強く影響を及ぼすことから、土壌圏における炭素循環を制御する重要なフラックスであると考えられる。したがって、本研究では日本の亜熱帯地域に分布するマングローブ林(Bruguiera gymnorrhiza)を対象とし、夏季および冬季における根滲出物の定量的評価とこれらの結果に基づく根滲出物の年間炭素フラックスの推定を目的とした。
 本実験は夏季(2024年9月)と冬季(2025年2月)に沖縄県石垣島北西部に位置するガブルマタ川河口のマングローブ原生林(優占樹種:オヒルギ)で行った。林内の上流および中流部の表層0-30cm、深層30-60cmの土壌においてシリンジ法に準じて根滲出物を定量した。また、2024年9月および11月における各深度の細根現存量(g m-2)から年間の根滲出物フラックス(C ha-1 yr-1)を算出した。
 夏季および冬季の根滲出物量は0.03〜1.69(n=15)、0.03~1.16(n=28)mg C g root -1 h-1で冬にのみ上流部の深層で中流部(表層および深層)よりも有意に高く(p<0.05)、全データから冬よりも夏の生産量が高い傾向を示した。また、年間の根滲出物フラックスは0.2〜0.6 tg C ha-1 yr-1で世界のマングローブ林面積1.4×107 haに換算すると、3〜9 Tg C yr-1であり、深さ0-60 cmではNPPの最大12 %程度に相当することから、マングローブ林内における主要な炭素フラックスの一つである可能性が示された。


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