| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-109  (Poster presentation)

エゾスナゴケによる桜島溶岩からの元素溶脱作用の解析
Analysis of elemental dissolution from Sakurajima lava by Niphotrichum japonicum

*山北絵理(京都工芸繊維大学)
*Eri YAMAKITA(Kyoto Institute of Technology)

コケは、土壌のない岩石上に、仮根と呼ばれる組織で体を固定し生育することができる。体表全体から降水に含まれる栄養を吸収して成長するため、栄養が乏しい岩石上にも生育することができるとされてきた。コケから供給される有機物と風化された岩石が合わさることで土壌形成が促進され、そこに種子植物などが移り住むことにより遷移が進むと考えられてきた。Lentonら(2012)は、花崗岩と安山岩上でヒメツリガネゴケを栽培した結果、岩石からの元素溶脱量が増加したことを報告しており、菌類共生によって溶脱量が増加する可能性を指摘した。本研究では、桜島でのフィールド調査(Tagawa, 1964)で、溶岩への初期遷移が報告されているエゾスナゴケを桜島溶岩上で栽培することにより、岩石からの元素溶脱量の時間変化を解析した。また、栽培するコケを殺菌処理した場合の変化も比較した。
96日間の栽培後、コケ中のCa含量(wt%)は殺菌処理なしで1.6倍、殺菌処理ありで1.3倍に増加した。Mg含量(wt%)は殺菌処理なしで変化せず、殺菌処理ありでは減少した。栽培後の岩石から水抽出したCa, Mg量はコケの有無によらず変化しなかった。今後は栽培系の規模を大きくし、微量金属元素の変化についても検討したい。


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