| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-110 (Poster presentation)
草原で行われる野焼きは熱や無機成分供給・富栄養化防止等により多面的に植物に影響することが知られる.茅葺に用いるススキMiscanthus sinensisに対しては経験則的に野焼きにより茅としての品質が向上すると考えられているが,野焼きのもたらすどの変化が重要か明らかにされていないうえ,条例等により厳しい実施規制がかけられている.そこで本研究では茅の品質を向上させる野焼きの代替手法を検討することを目的に,つくば市内の草原で,2021年に水稲用粒状ケイ酸カリウム1反あたり0,20,40 kgの施肥処理,2023年に「灰供給」「無機成分(液体ケイ酸肥料)供給」「リター除去」の野焼き代替処理を実施し,ススキの形状と機械的特性(強度・剛性・靭性)にどのような影響をもたらすのか調査した.
リター除去は断面形状(断面係数・断面二次モーメント)を有意に減少させた.これはリター除去により土壌表層環境が変化しススキの成長が抑制された可能性を示唆している.また,ススキバイオマスが多い場所でリター除去による負の効果が低減され,逆に20 kg/反のケイ酸施肥下では有意に増大した.
灰散布処理は強度・靭性を向上させ,リター除去は強度低下傾向を示した.剛性に対しては有意な処理効果は確認されなかった.しかし,機械的特性は形状と材質の影響を受けるため,処理の影響を直接的に解釈することは難しい.
そこで,形状による補正をしたうえで再度解析を行い,材質による変化を検討した.その結果灰散布による強度・剛性の有意な向上が確認され,リター除去は有意な剛性低下を引き起こした.靭性に対しては明確な処理の効果がなく,形状による影響が大きいと考えられた.
以上より,灰散布は材質強化による強度・剛性向上効果をもち,リター除去は特にケイ酸施肥環境下で形状変化を通じて剛性低下を引き起こす可能性が高いことが示唆された.ケイ酸施肥単体や液体ケイ酸供給はススキの明確な形状・材質の変化を引き起こさないと考えられた.