| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-114  (Poster presentation)

「外来種」かどうかは草花に対する好ましさを変えるか?
Do people's preferences for plants change depending on whether they are alien or not?

*江川知花(農研機構 農環研), 赤坂宗光(東京農工大)
*Chika EGAWA(NIAES NARO), Munemitsu AKASAKA(Tokyo Univ of Agri and Tech)

現在、自然環境中には庭や花壇から逃げ出した様々な外来園芸植物が定着している。生物多様性保全上はこうした種の定着は望ましくなく防除等の管理が求められることも少なくない。しかし、多くの市民が自然環境中に外来の花がある状況をどのように認識しているかは明らかでなく、管理に対する理解が得られるかは不明である。森や山で咲く花は外来種でも好ましい、と捉える人が多ければ、管理が支持されないことも考えられる。本研究では、全国の男女5,000人を対象としたアンケートにより、森や山などの自然環境中で花が咲いているのを見た際の感じ方を、花全般、外来の花それぞれについて把握した。これに基づき、外来の花に対する好感度が、実際に自然度の高い場所で草花を見る頻度やメディアを通じそれらに関する情報を得る頻度、外来種について見聞きした経験の有無などによって変わるかを解析した。

花全般について尋ねると、全体の95%以上の人が森や山などに花があることは「とても好ましい」「好ましい」「どちらかといえば好ましい」と回答し、森や野山から花を取り除く外来園芸植物の防除管理が積極的には支持されない可能性が示唆された。
花への好感の程度は、自然度の高い場所で実際に草花を見る頻度の高い人や、野生の草花に関する情報を得る機会の多い人ほど強かった。さらに、これらの人の約半数は、「外来種であっても森や山などに花があることは好ましい」と回答した。一方、外来種について見聞きした経験のある人では、森や野山で外来の花が咲いていることを好意的に見る人の割合が相対的に低かった。

自然度の高い場所で草花を見る頻度や草花の情報を得る頻度は年収や年齢と有意な正の相関が見られたことから、経済的・時間的な余裕が大きい人ほど草花と頻繁に関わっており、花が外来種であっても愛着を感じると推察される。本発表では、さらに、外来種ならば好ましくないと認識し、管理を支持しうるグループについても検討・議論したい。


日本生態学会