| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-116 (Poster presentation)
気候変動に伴う植物の開花や動物の出現時期などの生物季節の変化が世界中で検出されている。生物季節の長期観測プログラムにおいて、植物では特定の個体を選定して開花や落葉などを観測する手法が主流である。一方で動物の生物季節については特定の場所を選んで観測事象の発生日の記録を行う場合が多い。この観測において、地域個体群サイズの変化によって記録日の分布の裾野が変化する可能性も指摘されている。したがって、気候変動による気象要因の変化が動物の生物季節に影響しているかを評価するためには、個体群サイズに影響する要因も同時に考慮する必要がある。本研究では気象庁によって蓄積されている生物季節観測の水田を主要な生息環境の一つとする動物の記録を使用し、個体群サイズの指標として生息地面積を仮定し、観測所近辺の水田面積と気象要因の変化が生物季節に影響しているかを評価した。
1970~2019年の間に気象庁によって蓄積された生物季節観測記録のうち、「アマガエルの初鳴」・「シオカラトンボの初見」・「アキアカネの初見」・「トノサマガエルの初見」の4種の記録を使用した。気象台近辺の土地利用は1976~2016年までの8か年分の土地利用細分メッシュを使用して気象台から半径5km内に存在する水田面積を集計した。気象値は各気象台の計測値を使用した。各種の出現月の気温・湿度・降雨量・水田面積の割合を説明変数、各種の記録日を応答変数にしたモデル解析によって、生息環境の変化と気象値の影響を切り分けて推定した。
結果は、いずれの種においても経年的に記録日が遅くなる変化が検出された。また、いずれの種においても水田面積の割合は負の効果を持っていた。すなわち、気象台近辺の水田面積の減少は個体群サイズの縮小を介して記録日を遅くする可能性がうかがえた。各種に対して影響する気象変数も検出されたことから、気象値の変化も記録日の変化に影響する可能性がうかがえた。