| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-117  (Poster presentation)

本州中部の高層湿原および半自然草原におけるオサムシ科群集と立地環境との関係【A】
Relationships between Carabidae communities and environment in high-moor and semi-natural grassland of central Honshu, Japan【A】

*渡邊美里, 大窪久美子, 本間政人(信州大学農学部)
*Misato WATANABE, Kumiko OKUBO, Masato HONMA(Shinshu Univ.)

オサムシ科は多様性が高く、また移動能力が低く、環境の変化に敏感なため環境指標性が高い分類群とされる。本研究の目的は本州中部を代表する草原植生が卓越する霧ヶ峰における湿生草原、特に高層湿原での本科群集の環境指標性を検証することとした。
調査地区は高層湿原13地区と半自然草原9地区、樹叢2地区の計24地区である。群集調査は2024年8月~12月に行われ、各地区のP.F.T.数は2反復で40個とした。相観植生と土壌水分指数(7段階)が記録測定された。
全期間中、5亜科31種1,354個体が得られた。希少種はセアカオサムシ(環境省:NT)とオオサムシ(本州中部亜種:(長野県:NT))、ヒロムネナガゴミムシ(京都府:要注目種)だった。優占種はカタシナナガゴミムシとヒメホソナガゴミムシ、アオオサムシ(信濃亜種)、クロナガオサムシ(基亜種)、オオサムシ(本州中部亜種)の5種で、これらの合計個体数は全体の78.3%を占めた。個体数の季節消長は高層湿原でも春・秋繁殖型の二山型で、両期共に一般的な時季よりもピークは遅かった。TWINSPAN解析では全地区は6群集型(A~F)、全出現種は7種群(Ⅰ~Ⅶ)に分類された。高層湿原の群集型はB・C・Aで特にヒメホソナガゴミムシ等の湿性種群(Ⅱ)が出現した。群集型Eではセアカオサムシやオオオサムシ(本州中部亜種)の種群(Ⅶ)が出現した。DCA解析では第Ⅰ軸の左から右に群集型E・D・F・A・C・Bの順で配置された。第Ⅰ軸は土壌水分指数と有意な負の相関があった。同地域の半自然草原や樹叢での先行研究(本間・大窪、2022)と比較すると、本研究のみで出現した4種の内、特にミズゴケ群落で個体数の多かったヒメホソナガゴミムシや、ヒロムネナガゴミムシは高層湿原の湿性環境を指標する種と考えられた。本研究はJSPS科研費JP22K05706の助成を受けた。


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