| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-118 (Poster presentation)
アリ類は陸上生態系の食物連鎖の上位種であり、知見がある程度蓄積されている分類群で、また移動性が低いことと真社会性昆虫という特徴的な種生態を有するため、環境指標生物として有用であるとされる。しかし群集生態学的な知見は少ないため、本研究の目的は異なる立地環境におけるアリ類群集の種組成と構造の解明とした。調査地区は伊那キャンパス構内に17地区(各面積100m2)が設定された。群集調査は見つけ採り法、掬い取り法で実施された。また立地環境調査として木本層群落高(樹高)、草本層植被率、リタ―層高、相観的光条件が測定・記録された。群集解析はTWINSPANとDCAが用いられた。
アリ類は3亜科16属29種、3198個体が確認され、RDB種はトゲアリ、テラニシケアリ、アミメアリが出現した。樹高・リタ―層高との間に有意な正の相関、草本層植被率・光条件と前者の間に有意な負の相関がみられた。
群集分類から指標種はヒメハリアリ、トビイロシワアリ、アミメアリ、トゲズネハリアリで、全地区は4群集型、全種は4種群型に分類された。共通種はトビイロケアリ、アメイロアリ、森林性共通種はムネアカオオアリであった。孤立した草地ではトビイロシワアリ、クロオオアリ、クロヤマアリ、キイロシリアゲアリの草地性アリ類が出現した。孤立した森林ではヒメハリアリ、アズマオオズアリ、ニセハリアリの森林性アリ類が出現した。これらは立地環境の指標種となると考えられた。草本層植被率は草地性種が出現した群集型で有意に高く、樹高とリタ―層高は森林性種の出現した群集型で有意に高かった。
DCAでは草地性種群の群集型が第一軸上の負側に、また森林性種群の群集型が正側に配置された。DCAの第一軸は光条件と有意な負の相関、樹高とリタ―層高に有意な正の相関があったことから、草地性種群の群集型と森林性種群の群落型の立地環境の違いが示された。