| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-119 (Poster presentation)
諏訪湖は本州中部を代表する湖で、地域住民や観光客にとって重要な自然資源である。しかし、水質悪化と水界生態系の劣化が懸念されている。特に外来植物の拡大が在来種や生物多様性の低下に影響を与える可能性がある。本研究では諏訪湖の環境問題や生物多様性保全に対する利用者および県民の意識を把握し、国や県の生物多様性戦略と照らし合わせて、環境意識の現状を評価することを目的とした。
アンケート調査は現地で対面形式で、諏訪湖を利用する地域住民や県民、観光客を対象に実施した。また予備調査も含め信州大学において対面で大学生を対象に同調査を実施した。アンケート項目は諏訪湖の水質認識、外来植物の影響、環境保全活動への関心や参加意欲などである。
有効サンプル数は167で、内訳は農学部学生(127人)、その他学生(18人)、温泉組合所属(12人)、その他現地(10人)の4グループである。
農学部の学生は基本的な環境問題や自然に対する知識を有するが、環境活動には参加していなかった。温泉組合回答者は地域活動への参加が50%で4回以上と積極的だが、「国の生物多様性戦略を知らない」が92%で環境政策の認識は不足しており、知識と実践のギャップが全体的な環境ガバナンスに影響していた。
「政策認識の不足」については、国の生物多様性戦略の認知度は32%未満だったが、地域戦略は全グループにおいて17%未満と低かった。政策設計と伝達の不一致が認められ、マクロ政策と地方実践の間に乖離があった。
次にグループごとに「マクロ問題」と「地域問題」への関心が分かれていた。農学部学生は気候変動などグローバル問題に関心があるが、諏訪湖での繁殖が問題になっているヒシについては73.2%が知らず、地域独自の問題への関心は低かった。温泉組合の回答者は外来種問題には関心を示したが、全体的に生態系への基礎的理解の不足がみられ、協力への障害となっていた。