| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-121 (Poster presentation)
ツルフジバカマはマメ科のツル性多年生草本で、希少な草原性チョウ類のヒメシロチョウ(絶滅危惧ⅠB類 (EN) ; 環境省・絶滅危惧Ⅱ類(VU);県)の食草である。現在、ヒメシロチョウは本地域ではほぼ絶滅とされ、本種が自生する半自然草原群落も減少が懸念される。そこで本研究の目的は本地域における本種群落の組成と構造およびその立地環境を明らかにすることとした。本種が自生する2地点(調査地A;20プロット、調査地B;10プロット)で計30プロットを設置し、植物社会学的植生調査および、相対光量子束密度調査、土壌水分調査を行った。各プロットにおける各出現種の被度百分率と植物高を用いて積算優占度と相対積算優占度を求め、後者を使いTWINSPAN解析で群落分類を実施した。さらに本種の優占度と各出現種の優占度、群落高、出現種数、外来種の出現種数、相対光量子束密度、土壌含水率(%)との相関係数を各々求めた。
TWINSPAN解析の結果、全プロットは8群落型、全出現種は7種群に分類された。本種の優占度と出現頻度が高い群落型は調査地Aの種群Ⅰ出現区(クズ)と種群Ⅱ出現区(カナムグラ・ヒルガオなど)であった。また本種の優占度と有意な正の相関を有するのはカナムグラとヒルガオの優占度だった。一方、本種の優占度と有意な負の相関を有するのはススキやカキドオシ、ハリエンジュ、チカラシバの優占度と群落高だった。相対光量子束密度や土壌含水率と本種の優占度に有意な関係はなかった。現在、両調査地は刈取り管理が実施されていた。本種の優占度の高い群落型ではツル性草本のカナムグラやクズも優占しており、保全策としては、これらの競合種を抑制するための選択的刈取り管理の実施が提案された。ススキや外来木本のハリエンジュは本種の優占度を低下させる競合種であることが示され、選択的刈取りや実施頻度を増やす管理の必要性が示唆された。