| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-126 (Poster presentation)
農業用ため池(以下、ため池)は農業の近代化や担い手不足等で減少傾向にあり、外来生物の侵入なども加わり、ため池生態系は衰退している。一方、ゴルフ場には池(以下ゴルフ場池)が管理されており、先行研究では水生植物の生育場所となりうる可能性が示唆された。本研究ではゴルフ場池およびゴルフ場の周囲1km以内のため池で調査を行い比較することで、ゴルフ場池に生息、生育する動植物種を明らかにし、ゴルフ場池がため池生態系の代替となりうるかを検証した。2023年6月から2024年11月に近畿4府県内のゴルフ場池20カ所(ゴルフ場数9)と周囲1 km以内のため池11カ所において水生動植物、湿生植物、シダ植物を対象として、見つけどり方式による生物調査を実施した。最大水深、面積、周囲長、標高、樹木被覆率、コンクリート護岸率、草刈り回数、周囲1 km以内のため池数、造成年数、水質(水温、DO、pH、COND)も調査した。ゴルフ場池では絶滅危惧Ⅱ類4種、準絶滅危惧7種、ため池では絶滅危惧Ⅱ類1種、準絶滅危惧4種を確認した。計測した水質項目ではゴルフ場池とため池に大きな違いはなく、池当たりの平均出現種数±標準偏差(ゴルフ場池、ため池)は魚類(1.4±1.0、1.2±0.9)、両生類(0.9±0.8、0.5±0.5)、水生昆虫類(5.8±4.0、6.5±2.9)、水生植物(3.2±2.7、1.7±1.2)、湿生植物(28.5±10.5、22.3±8.8)、シダ植物(5.1±3.4、4.5±2.3)であり、両生類のみゴルフ場池とため池に有意差が認められた。アメリカザリガニの出現率はゴルフ場池(5%)がため池(45%)より有意に低かった。本研究によってゴルフ場池には絶滅危惧種の保全場所が含まれることが明らかとなり、在来生態系の破壊者であるアメリカザリガニの出現率の低さからもため池生態系の代替となる可能性が示唆された。