| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-128 (Poster presentation)
ゴルフ場は生物多様性に貢献する場であることが近年示されつつあり、自然共生サイトおよびOECM認定の候補地の一つとされている。発表者らが近畿圏の複数のゴルフ場の池を調査した所、国内希少野生動植物種に指定されるセトウチサンショウウオの幼生が確認される等、一部の池に豊かな自然が確認された。現在、日本ではOECMの増進目的で自然共生サイトの認定を進めているが、ゴルフ場が認定された事例はほぼなく、申請の過程や認定後に課題があると考えられた。本研究では、4つの自然共生サイト認定基準を参考に、ゴルフ場池を認定する際の課題整理を行った上で、認定制度の地域生物多様性増進法への一本化を踏まえた展望を議論した。課題があると考えられた基準は(2)ガバナンス・管理に関する基準、(3)生物多様性の価値に関する基準、(4)管理による保全効果に関する基準となった。基準(2)の課題は、地権者関係が複雑で合意形成のコストが高い、認定後のコース改変制限への懸念等があり、基準(3)では運営者の方針による影響に加え、生物調査による経営中断への抵抗感が課題と考えられた。基準(4)では、運営者の交代が多く活動姿勢の持続性に波がある、等の課題が挙げられた。課題に対する提案として、環境省が運用予定の自然共生サイト管理者と支援希望者を繋ぐマッチングサイトの利用、生物調査は初回のみ調査会社委託による調査を実施、定期モニタリングは環境DNA解析で指標種のみ確認する、等のゴルフ場運営に支障のない申請・認定フローが考えられる。認証制度の法制化後は生物多様性を回復・創出する活動も重視される。ゴルフ場では芝や池管理等の運営の継続により生態系が維持されてきた可能性は十分にあり、法制化後もゴルフ場池の認定は可能かつ価値があると推察できる。本研究ではゴルフ場の池を焦点にあてたが、本研究の結果や展望は池以外の要素を含めたゴルフ場全体にも適用できると考えられる。