| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-129 (Poster presentation)
生物多様性条約昆明モントリオール目標の採択や、自然に関する財務情報の開示(TNFD)、国による自然共生サイト認定の開始など、生物多様性保全の機運は高まっている。その一方で、生物種を同定できる専門家は限られており、生物多様性の状態のモニタリングや、保全効果の評価等を広域で定量的に行う上で、大きな障壁となっている。
指標種は、限られた種の情報に基づいて、効率的に調査を行うための代表的な手法の1つである。しかし、既存の指標種選定手法は、生態系タイプの分類を目的としていて多様性の定量的な指標とはならない、多様性指標種を選定する手法もあるものの膨大な計算時間を要するなど、課題がある。
本研究では、生態系タイプ・気候帯ごとに、種の多様性の高さを評価することができる指標種を、種の分布情報に基づいて選定する手法の開発を行った。生態系・気候帯の指標性については、ある種が、他の生態系・気候帯に比べて、注目する生態系・気候帯における出現頻度が、帰無分布よりも高いかどうかに基づいて評価した。また、種多様性の指標性は、あるサイトにおいて観測された種数を従属変数とし、指標候補種がそのサイトに出現しているか否かを説明変数としたモデルと、説明変数がない帰無モデルとの間で予測力の差分(dAIC値)を算出し、dAICが大きい種ほど種多様性との関連性が高いと評価することとした。
環境省自然環境保全基礎調査第6-7回植生調査のデータを用いて、これらの生態系特異性と種多様性に関する指標性を算出した。その結果、生態系特異性・種多様性の指標性ともに、少ない計算量で、既存の手法と同等または優れた性質を持つ指標性評価ができることが示された。例えば、指標種に関する既往研究が多い二次草地では、良い指標種候補にオカトラノオ、ヒヨドリバナ、オトコエシ、ツリガネニンジンなど、既知の良好な草原に生育する種が含まれていた。