| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-130  (Poster presentation)

耕作放棄地と再生湿地を持つ谷津環境におけるカエル類の生息地利用の季節変化
Seasonal variation in habitat use of frogs in small valleys with abandoned fields and restored wetlands

*松島野枝, 西廣淳(国立環境研究所)
*Noe MATSUSHIMA, Jun NISHIHIRO(NIES)

生活史の中で多様な環境を利用する両生類の保全のためには、繁殖場所となる湿地の維持・再生だけでなく、周囲の陸域環境の維持・管理も必要となる。しかし、非繁殖期に湿地周辺の様々な環境を両生類が時間・空間的にどのように利用しているかについては不明な点が多い。そこで、千葉県の北総地域にある「谷津」を対象として、カエル類各種の非繁殖期における生息地内の環境利用の季節変化を調査した。谷津は丘陵地の侵食により形成された谷状の地形で、斜面や台地には二次林や竹林が、谷底部には湧水によって形成された湿地があり、その多くは水田として利用されていたが、現在では耕作放棄地となっている場所が少なくない。グリーンインフラや生物多様性保全の目的で、このような谷津での湿地の造成が行われている。本研究の調査地でも、谷底部が全面的に耕作放棄水田となっていたところに湿地が再生されている。
3つの調査地それぞれで、谷底部にある「湿地」と「草地」、斜面や台地にある「二次林」と「竹林」の4種類の調査地点を設定し、2024年の6月、8月、10月に各月3回ずつ、各調査地点で出現したカエル類の種類と個体数を記録した。調査は踏査および樹上性のカエルを対象とした筒状のトラップを使用した。調査地によって面積・標高や生息する種は異なるものの、様々な環境を利用する種(ニホンアカガエル)、主に谷底部を利用する種(ヌマガエル)、また、樹上性の種(ニホンアマガエル、シュレーゲルアオガエル)は8月以降には林内に設置されたトラップでよく見つかるといった、種によって利用時期や環境が異なる結果が得られた。生息する種の利用する環境を具体的に明らかにすることは、ランドスケープレベルでの湿地再生の効果や、谷津の環境の評価につながると考えられる。


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