| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-133  (Poster presentation)

山形県飛島における外来ネコの空間分布と食性の解明【A】
Spatial distribution and dietary habits of non-native cats on Tobishima Island, Yamagata Prefecture【A】

*伊藤賢太, 小峰浩隆(山形大学)
*Kenta ITO, Hirotaka KOMINE(Yamagata Univ.)

 近年、外来生物の導入による生物多様性の低下が問題となっている。ネコ(Felis catus)は侵略的外来種であり、世界的に在来生態系に影響を与えている。しかし、その実態が知られている地域はごく一部である。山形県の飛島は、多様な鳥類が確認されており、ネコによる在来生物相への影響が懸念されている。しかし、ネコの生息の実態や鳥類を含む在来生物相への影響は不明である。そこで本研究では、飛島のネコの生息の実態とネコによる在来生物相への影響を解明することを目的として、ネコの空間分布と食性を評価した。空間分布はカメラトラップを用い、食性はフン分析によって定量的に評価した。カメラは18台設置した。カメラの設置期間は最大で2022年4月18日~2024年11月15日だった。ネコの撮影枚数を目的変数とし、市街地からの距離、港からの距離、鳥類の撮影枚数、月、植生タイプを説明変数としてポアソン回帰で解析した。フンは、島内に100mのラインを12地点設定し、その区間を歩いて採集した。採集期間は、2022年10月、2023年5月~10月、2024年7月~9月、11月とし、各月に1度採集した。フンの内容物の出現頻度と相対出現頻度を求めた。その結果、空間分布について、飛島のネコは、市街地や港付近、鳥類が多くいる場所を利用している事が分かった。植生タイプごとのネコの利用は、タブ林、畑、マツ林の順に多かった。この結果から、ネコは森林域でも確認されるものの、市街地付近が分布の中心である事が示唆された。ネコの食性については、季節ごとにフンの内容物が変化し、スズメ大の陸鳥及び、ウミネコ大の鳥類を捕食している事が確認された。鳥類が少ない時期は、節足動物等の他の動物質の検出が増加した。本研究により、飛島では、ネコは完全に野生化しているわけではなく、人家周辺を中心に多く生息している事、陸鳥、水鳥の双方ともに捕食していることが明らかとなった。


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