| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-136 (Poster presentation)
特定外来生物クビアカツヤカミキリは大阪府では2015年に初確認され、既に府内29市町村、和歌山県の8市町村へ侵入・定着している。このように急速に分布を拡げた要因として、被害地域から離れた場所への定着が稀に生じ、これを起点として被害地域が拡大したことが挙げられる。そのため、長距離を移動分散した後に定着しやすい条件を特定し、対策を講じることが分布拡大の抑制に資すると考えられる。既往研究 (Osawa et al. 2022) から、侵入確率が高い地域は河川及び路網の密度が高いことが示されている。しかし、このような相関が、これら景観のもとでサクラ等の寄主木が多く見られることによるのか、物流に便乗した移動分散の結果、路網や河川沿いに分散していることによるのかは明らかにされていない。そこで、長距離移動の生じやすい条件を明らかにすることを目的とし、既被害メッシュから新規の被害メッシュまでの距離を分散距離の尺度とした解析の結果を報告する。
クビアカツヤカミキリの被害、対策状況のデータには、大阪府による市町村への照会と和歌山果かき・もも研による農業普及機関への照会に基づく調査結果を供した。移動分散に関わる景観変数としては、国土数値情報として公開されている、面積あたり道路総延長と、河川データから算出した面積あたり長さを用いた。
分散距離の大きい新規被害地は隣接するメッシュに対して相対的に路網が発達した場所であり、河川密度との関係は明瞭ではなかったことから、特に物流に便乗した長距離移動分散が示唆された。また、前年度まで被害が確認されていなかったメッシュでは、防除施策 (薬剤散布・ネット巻) はほぼ実施されておらず、移動分散した先で侵入定着を阻止する上で防除が機能するか否かは不明であった。発表では、これら説明変数に加えて、周辺の広葉樹林面積やサクラ等の寄主木の分布も考慮した解析結果を示す。