| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P0-137 (Poster presentation)
外来種は侵入地の在来生態系に大きな影響を及ぼすことがある. 特に生物多様性のホットスポットである島嶼への侵入は, 本土と比較してより侵略的になりやすいため, 早急な対策によって根絶することが望ましい. 種分布モデルは, 対象生物の分布と環境要因から侵入状況を視覚的に示すことが可能であり, これを外来種に適応することで外来種対策を講じる上で重要な知見を与える. 本研究では, 伊豆諸島の4島(大島, 新島, 三宅島, 八丈島)に侵入した国内外来種アズマヒキガエルBufo formosusの分布・個体群密度を調査し, 本種の各島における分布状況, そして, 侵入段階を明らかにする. 特に, 継続的な駆除活動が実施されている八丈島において, 本種の侵入範囲が生息適地の全体に広がっているのか否かについて着目した. 分布調査では各島における本種の位置情報をGPSで記録し, 8つの環境変数からMaxEntによる種分布モデルを作成した. モデルはそれぞれの島を個別に解析したモデルと, 侵入した4島をまとめて解析したモデルを作成し, これらの比較によって本種の各島における侵入段階を明らかにした. 個体群密度調査では, 10分間探索を行い, 本種の発見個体数を記録した. 分布調査の結果, 八丈島で最も発見地点数が少なく, 分布が局所的であることが明らかとなった. また, 種分布モデルの比較の結果, 八丈島では, 生息適地が島の広域に及ぶにも関わらず, 現状の分布は水源付近に集中し, 分布の拡大途中にあることがわかった. 個体群密度調査では, 八丈島は, 他の島と比較して低密度に生息していることがわかった. 以上のことから, 八丈島において本種は侵入初期段階にあることが示唆された. 八丈島は継続的に駆除活動が実施されている唯一の島であり, 駆除個体数は減少傾向にある. 今後の駆除活動によって根絶が実現されれば, 島嶼における外来種根絶の貴重な事例となることが期待される.