| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-138  (Poster presentation)

野外飼育によるカダヤシ雌由来の水溶性物質がグッピーとの種間競争に与える影響の検証【A】
Testing the effect of water-soluble chemicals released by mosquitofish females on interspecific competition with guppies by mesocosm experiments.【A】

*稲嶺景介, 鶴井香織, 辻和希(琉球大学 農学研究科)
*Keisuke INAMINE, Kaori SATO TSURUI, Kazuki TSUJI(Univ. of the Ryukyus)

 沖縄島では、先に侵入した外来魚カダヤシが後から侵入した外来魚グッピーに駆逐されつつある。これらの片方の種の個体群に他種の雄のみを導入した先行研究では、グッピーからカダヤシへの一方的な繁殖干渉(種間の誤った配偶行動による適応度の低下)による駆逐が推察された。しかし、2種の雌雄を混合飼育した際の帰結は不明である。また、カダヤシ雌が同種を抑制する物質がグッピー稚魚にも影響することが判明し、この物質の種間競争への影響評価が必要となった。現在、沖縄島のカダヤシの生息地は主に止水である池沼に限られ、河川ではグッピーが優占することから、我々は止水では滞留したカダヤシ雌の物質がグッピー個体数を抑制するが、流水ではこの効果が失われ繁殖干渉で有利なグッピーが優占するのではと仮説を立てた。この予測をテストすべく2種の雌雄を混合飼育する半野外実験を実施した。水槽水を隔日で全交換する操作の有無により流水及び止水環境を模し、流水の混在区(各種3ペア)、止水の混在区(各種3ペア)、止水の単独区(グッピーまたはカダヤシ6ペア)の合計4処理区とした。
 2種混在下での流水/止水の比較では、両種とも流水で個体数が多く、カダヤシ雌放出物質の流失による負の効果の緩和が示唆された。止水では混在区の2種の合計個体数が単独区の半分以下に抑制された。
 一方、実験期間を通じ、流水と止水の両条件でカダヤシの個体数がグッピーを上回った。止水では予測通りだが、流水では予測に反しグッピーの増殖が抑制されカダヤシが増殖した。飼育下では野外よりもカダヤシのグッピー稚魚に対するギルド内捕食頻度が高いかもしれない。また、2種の雌雄が混在すると、グッピー雄は同種への求愛を優先しカダヤシ雌への繁殖干渉が弱まる可能性がある。今後、2種の雌雄の混在時の繁殖干渉とギルド内捕食の調査が必要である。


日本生態学会