| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P0-157  (Poster presentation)

イトヨのトランスクリプトーム進化をもたらすシス制御エレメントの網羅的解析【A】
Comprehensive analysis of cis-regulatory elements underlying transcriptome evolution in sticklebacks【A】

*岡西啓太(東京大学), 桒田恵理子(岡山大学), 赤木剛士(日本バイオデータ), 石川麻乃(東京大学)
*Keita OKANISHI(Tokyo Univ.), Eriko KUWADA(Okayama Univ.), Takashi AKAGI(Nihon BioData Corporation), Asano ISHIKAWA(Tokyo Univ.)

遺伝子発現の総体であるトランスクリプトームの進化は、生物の形や性質の多様化を引き起こす。この遺伝子発現の制御において重要な役割を果たすのが、シス制御エレメント(CREs)である。CREsとはゲノム上の遺伝子近傍に存在し、転写因子等が結合する配列であり、その組み合わせによって遺伝子発現が調節される。このため、CREsと転写因子の関係とその変化は遺伝子発現制御とその進化において重要である。近年、CREsの変化により遺伝子発現が変化し、生物の表現型の進化が生じる例が報告されつつある。しかし、特に非モデル生物において、トランスクリプトーム全体の進化に寄与するCREsの多くは明らかになっていない。その理由は、一つの転写因子は複数のCREsに結合することができるため、一定のモチーフ配列を決定することが困難であること、また、非モデル生物では転写因子結合配列データが充実していないことである。本研究では、この問題を解決するために、モデル生物であるマウスの転写因子結合配列データと深層学習を用いて、非モデル生物であるイトヨのトランスクリプトーム進化を生むCREsを探索する。深層学習は、従来の機械学習とは異なり、柔軟で複雑な特徴でも自動的に検出することが出来る特徴を持つが、学習には一定のデータ量が必要である。多くの転写因子の配列特異性は真核生物間で高い相同性があることが示唆されているため、学習データとしてモデル生物であるマウスの豊富な転写因子結合配列データを用いた。現在、マウスのChIP-seqデータを利用して、CREsを予測するための学習モデルを構築した。今回作成したモデルでは転写因子の結合配列を十分に判別出来ていなかったため、今後は訓練データセットの再作成を行い、十分な精度を持ったモデルの作成を目指す。


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