| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-007  (Poster presentation)

常緑樹と落葉樹の葉と幹の水分状態の日周変動の季節変化【A】【O】
The Diurnal and Seasonal Variations in Water Status of Leaves and Trunks in Evergreen and Deciduous Trees【A】【O】

*紺頼楓, 小野田雄介(京都大学)
*Kaede KONRAI, Yusuke ONODA(Kyoto Univ.)

樹木の幹直径は生育とともに増加するだけでなく、1日の中でも昼間に縮み夜に回復するという周期的な微細変動を示す。また、このような幹直径の変動パターンは樹種によって異なることが知られている。しかし、そのような樹種依存的な幹直径の変動パターンが、炭素獲得や水分利用戦略とどう関わっているかはよくわかっていない。常緑樹と落葉樹は葉のフェノロジーや成長パターンが異なり、幹直径の季節変化や日変動に大きな違いがあると予測される。そこで、本研究では常緑樹と落葉樹の幹直径の季節変化や日変動幅を計測し、またこれらの変動に関連する葉の形質の季節変化を調べた。
京都大学の北白川試験地内で、ブナ科コナラ属の常緑樹アラカシQuercus glaucaと落葉樹コナラQuercus serrataの3年生ポット苗各種4個体を対象に、5月から11月まで10分ごとの幹直径を測定した。また、対応する時刻の気象データ (気温、湿度、太陽放射量、VPD)を測定した。加えて、毎月各個体3枚の葉を用いて、力学的特性や水利用に関する形質 (葉面積当たりの乾重、引張弾性率、水ポテンシャル、体積弾性率など)を測定した。測定期間内の幹直径の肥大成長パターン、1日の直径変動幅をアラカシとコナラで比較した。また、幹直径と気象データの日内変動幅も同様に種間・月ごとに比較した。
幹直径の季節変化は、両種ともに測定を開始した5月にはすでに増加を開始しているが、落葉樹のコナラは7月には増加が鈍化する一方、常緑樹のアラカシは9月ごろまで鈍化しないことがわかった。両種ともに、幹直径は日中に最小になり、夜間に最大となる周期的な日内変動を示したが、その変動幅は同程度か、アラカシのほうがわずかに大きかった。また日内変動の幅は5月から7月にかけて増加し、その後10月にかけて減少傾向を示した。気象データの日内変動幅に対する幹直径変動幅は種間で有意な差は確認されなかったが、月ごとに関係性の変化が確認され、葉の形質の影響が示唆された。


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