| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-011 (Poster presentation)
温帯地域における落葉樹の開芽時期は気温や日長の影響を受けて決まっており、種によってその影響が異なるために温暖化応答も異なると考えられている。このため、開芽時期の種間差が生じる生理学的要因を明らかにすることは重要である。本研究では愛知県豊田市の暖温帯二次林に優占する落葉広葉樹9種を対象として、切枝を用いた室内実験で温度と日長の影響を調べ、7年間の野外調査による開芽時期との関連を整理した。2022年12月から2023年3月まで2週間間隔で、各種につき5-6個体から長さ30cm程度のシュート1本ずつ刈り取って水に差し、人工気象器内(20ºC、日長は14時間と10時間の2️段階)で1週間間隔で芽の状態を観察して開芽時期を調べた。温度条件としては刈り取りまでに経験した低温時間数(<5 ºC)および、刈り取りまでの野外条件での有効積算温度(>5 ºC)とその後の人工気象器内での有効積算温度を考慮した。
この結果、12月刈り取りシュートでは散孔材の樹種よりも環孔材と半環孔材の樹種の開芽が早く、1〜3月刈り取りシュートではその逆の傾向が見られた。この傾向は短日よりも長日条件で顕著だった。同様に、低温時間数が少ないときには環孔材の種のほうが有効積算温度がやや少ない段階で開芽し、多いときには散孔材の種のほうがより少ない有効積算温度で開芽する傾向が見られた。さらに7年間の野外調査によると開芽までの低温時間数には大きなばらつきが見られたが、その範囲では種間で開芽の順番には大きな影響はないと考えられた。