| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-014  (Poster presentation)

異なる気候帯における森林内の光獲得競争の強さの比較【O】
Intensity of light competition within forests at different climate zones【O】

*小野田雄介(京都大学), 近藤里莉(京都大学), 相場慎一郎(北海道大学), 松尾智成(ワーゲニンゲン大学)
*Yusuke ONODA(Kyoto Univ), Riri KONDO(Kyoto Univ), Shin-ichiro AIBA(Hokkaido Univ), Tomonari MATSUO(Wageningen Univ)

植物が高さ成長をする究極的要因は、光をめぐる競争である。周りの植物よりも高ければ、光をより多く獲得でき、下層の個体の成長を抑圧できる。一方で、高さ成長には、通水や力学、支持器官の比率増大などのコストが伴う。したがって、植物の高さは、光獲得というベネフィットと、競争に伴うコストのバランスに依存しており、生理学・生態学と進化学的視点が不可欠である。光をめぐる競争は一方向競争であるにも関わらず、1つの群落内にも、異なる高さの植物が共存しており、一見矛盾しているように思われる。一方向競争における共存を理解するためには、競争に伴うベネフィット(光獲得量)とコストの把握が不可欠であり、これを端的に評価する方法として、個体の相対成長速度(RGR~ dM/M)を、光獲得効率(個体重Mあたりの光獲得量I)と光利用効率(光獲得量Iあたりの成長量dM)に分解して解析する方法(dM/M = I/M * dM/I)がある。本研究では、この解析フレームワークを冷温帯の苫小牧、暖温帯の和歌山、亜熱帯の屋久島の3箇所において、様々な林齢の二次林(20m x 20mの26個のプロット)に適用した。RGRの樹高依存性、そして、それを構成している光獲得効率と光利用効率の樹高依存性が、林齢とともにどう変化し、そのパターンに気候の影響があるかどうかを明らかにする。これらの解析により、異なる気候帯における森林内の光獲得競争の強さを定量的に比較し、それによる樹木の成長や森林構造への影響に関する理解を深めたい。


日本生態学会