| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-015  (Poster presentation)

アラスカ内陸部永久凍土上泥炭林における細根と土壌栄養の深度分布【E】【O】
Vertical distributions of fine roots and soil nutrients in a peatland forest underlain by permafrost in interior Alaska【E】【O】

*甘田岳(森林研究・整備機構), 藤井一至(森林研究・整備機構), 小林秀樹(海洋研究開発機構), 野口享太郎(森林研究・整備機構)
*Gaku AMADA(FFPRI), Kazumichi FUJII(FFPRI), Hideki KOBAYASHI(JAMSTEC), Kyotaro NOGUCHI(FFPRI)

周北極域では温暖化が急速に進行しており、北方林生態系における永久凍土融解の影響が懸念されている。近年の研究から、細根を深く張る植物種ほど永久凍土融解に対する応答が迅速である可能性が示唆されているが、永久凍土上の植物種がどの土壌深度にどの程度の細根バイオマスを投資しているのかは明らかではない。本研究では、永久凍土植生の細根深度分布や細根と土壌栄養の関係を明らかにするために、アラスカ内陸部の典型的な永久凍土上北方泥炭林において、地上部と地下部のバイオマスを評価した。アラスカ大学ポーカーフラット研究サイトにおいて、永久凍土林の下層植生の不均一性を網羅するような1 m2コドラートサイトを10か所設営した。下層植生の地上部バイオマスを評価するために、各コドラートの50㎝四方区画において、出現全直物種の刈り取り調査を実施した。地下部の細根バイオマスを評価するために、融解層が最も厚くなる9月に、地表から凍土面まで10㎝深度毎に土壌コアを採集し、各コアにおいて全細根を分別した。下層植生の地上部バイオマスは90-300 g m-2とばらつき、平均181 g m-2程度であった。一方、地下部バイオマスは1200-2300 g m-2と大きくばらつき、平均1758 g m-2と地上部バイオマスの10倍程度に達した。また、表層15㎝までだと全細根バイオマスの30%未満となっており、永久凍土林の地下部炭素動態を明らかにする上で、深い土壌層の細根バイオマス評価の重要性が示唆された。さらに、35㎝より深い土壌層には高木種や低木種の細根は確認できず、草本類(細根形態による種識別が可能)の細根のみが確認され、細根深度分布を介したニッチ分割の可能性が示唆された。今後、細根バイオマスの種比率や土壌栄養の深度分布を明らかにすることで、永久凍土植生における細根深度分布の種間差とその生態学的意義を明らかにすることを目指す。


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